東京高等裁判所 昭和62年(ラ)664号 決定 1988年1月20日
抗告人(破産者)
X
右代理人弁護士
木村晋介
主文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
一 本件抗告の趣旨は、「原決定を取り消す。破産者Xを免責する。」との裁判を求めるというのである。
二 よつて判断するに、一件記録、特に抗告人が本件破産申立て及び免責申立てに際して原審に提出した債権者一覧表に徴すると、抗告人は昭和六〇年三月、見るべき資産・収入はない一方、負債は四〇〇〇万円以上あるとして自己破産の申立てをしたこと、右負債の大部分は昭和五七年秋から昭和五九年春にかけて生じたものであること、その使途として「借金返済」と説明されるものが多いものの、抗告人自らの説明によつても被服ないし物品購入により生じたとされる負債が七、八百万円にも上ること、右の昭和五七年ないし昭和五八年ころ抗告人は「ロマン」というスナツクを経営して派手な生活をし、かつこのスナツクを処分すれば返済できるなどといつて友人らから三、四百万円を借りたこと、しかるに右スナツクを処分するや行方をくらまし、この処分により取得した金員を借金の返済には全く充てていないこと、抗告人はこれを、右により得た金員が一五〇万円で、暴力的サラ金に追われ、生活費も必要であつたためと弁解するが、にわかに措信し難いし、仮にそうであつたとしても右の友人らに対して不誠実のそしりを免れないこと、以上の事情が認められ、その他一件記録に現われた一切の事情に徴するとき、抗告人には浪費により著しく財産を減少し又は過大の債務を負担したとの不行跡があり、かつその程度は軽くないと認められるので、破産法第三六六条ノ九第一号所定の免責不許可事由があるというほかない。
よつて、抗告人を免責不許可とした原決定は相当であり本件抗告は理由がない
(裁判長裁判官 賀集唱 裁判官 安國種彦 伊藤剛)